2011年10月26日水曜日

円高とTPPとタイの水害・・・問題の根っこは同じ

タイの大水害で日本から進出している企業が大変な被害にあっている。
特にトヨタ系の部品メーカはタイを部品供給拠点としているので影響が大きいようだ。
今回の水害をただの災害と捉えてはいけない。
上流地域の保水能力の低下がこれほどまでの災害に繋がった大きな原因であることを見逃してはいけない。日本においても同様で大雨による災害は近年、非常に多くなっており、また災害の規模も大きくなっている。
災害の大規模化の大きな要因は、上流地域での山林や農地の保全不全による保水能力の低下とそれらによって引き起こされる土砂災害などの増加による部分が大きい。

タイで言えば、近年外国からの工場進出が進み都市周辺に大規模な工業団地がいくつもできた。そこで働く為に近郊の山村や上流地域の山村から多くの人が都市部に流入してきている。
そのため上流地域の山村では、働き盛りの男性や若い人達は都市部に流出し残っているのはお年寄りと女性や子供ばかりになりつつある。
どこの国でもそうだか、現金が稼げる地域に人は移動する。
そのため、それらの山村では、山林や農地の管理保全機能が低下しつつある。
今回の災害はある意味、人災とも言える。

日本の高度成長時代と同じような現象がタイなどの発展途上国で起きている。
企業は安い労働力を求め、現地生産で円高の影響を少なくし、FTAなどの関税条約を締結することで関税の障壁を少なくするため海外に進出する。
進出する国の経済は発展し、その国の国民は豊かになっていくが、自然は知らないうちに少しずつ破壊され、ひとたび災害がおきれば大規模化する。

人間は学ばない動物なのかもしれない。
「均衡のとれた発展」という言葉が使われる場合が多々あるが、この「均衡」という言葉の意味をもう一度考えなおして見る必要がある。

円高に歯止めが掛からない。60円台になる可能性もあながち無いとは言えなくなりつつある。
世界経済の状況を見る限り、当面はこの傾向は続くことになるだろう。
この間、政府は円高に対しほとんど無策と言ってもいい。
何をしたらいいのかわからない状況だ。
なんといっても財務大臣が安住氏である。期待する方が無理であろう。

政府の喫緊の経済対策は大きく分けて2つに集約されるだろう。
ひとつは『円高対策』
もうひとつは、今後の『世界経済の減速、及び金融不安に対する対策』
であろう。

「円高対策」で言えば「想像力」と「発想力」を持った政策や経営の実行ということだろう。
根本の問題は政府に明確な「為替政策」が無いと言うことに尽きる。ついでに言えば明確な「金融政策」も無いという点も挙げられる。
ドル安、ウォン安については、アメリカや韓国の輸出促進のための為替政策による影響も大きいという点を忘れてはいけない。

円高対策としては円高のメリットを生かした鉱物資源の確保なども有効だし、健全で優良な対外資産への投資や融資などもメリットを生かす方法である。
輸出について言えばアップルの商品のような「想像力」や「発想力」に富んだ製品の開発に力を入れるということである。
アップルの経常利益率は30%を超える。
これからは「数を売って儲ける」という発想から「価値を売って儲ける」という発想に転換していかなければ日本は生き残れなくなるだろう。
「価格競争からの脱却」を目指した経営に切り替えていくことが最大の円高対策である。
簡単に言えば「発想の転換による産業の構造改革」を進めるということであろう。

農業を例にとれば規模拡大による生産性の向上を目指しても一戸当たりの耕作面積が日本の100倍のアメリカや1000倍のオーストラリアに勝てる訳が無い。
デンマークのような少ない耕作面積でも高い収益が上げられる農業を目指すことの方が日本にはあっているのではないかと思う。
同じように農業で大切なことは「適地適産」である。
農産物は産地によって味が違う。その地域に最適な産物を作ることが農産物の価値を高めることにつながり適正な価格を維持することに繋がる。「儲かる作物を作る」という発想から脱却することが重要である。
他の産業でもこの発想は重要である。

 『世界経済の減速、及び金融不安に対する対策』については、「国内の景気対策=内需の拡大」が最大の対策である。影響を受ける最大の部門が「輸出=貿易」である。輸出の減少分を国内の需要(消費)でどれだけ補えるかが最大のポイントである。

中国、インド、ブラジルなどがリーマンショックの影響を最小限にとどめられたのは国内の需要(消費)の伸びで輸出などでの減少分をカバーできたからに他ならない。

今、日本政府が最優先に行うべき政策は国内の景気対策であり、賃金の下落傾向に歯止めをかけ家計の可処分所得を増やす政策を採ることである。

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