TPPを国の財政面から見てみると面白いことがわかる。
Ⅰ.マイナス要因
①関税収入がなくなる。(毎年約8000億円程度 国の収入の1.8%程度)
日本は先進国の中で最も関税収入比率の低い国と言っても過言でないほど開かれた国である。
関税収入の中で最もウェートが高いのが農産品で工業製品等より多い。関税ゼロの工業製品も数多く存在する。
②米などの農産品等の関税撤廃に伴う所得補償等の支出(毎年)
あくまで個人的試算だが、全品目関税ゼロの場合・・・最低でも約1兆5000億円程度は必要になろう。
③失業や廃業・転業等に対する対策費(毎年)
一部の業種では雇用等に大きな影響が出る懸念もあり、それらの対策費として約3000億円程度は必要になろう。
④輸入品価格の低下と低価格製品の増加に伴う消費税の減収分(現状の消費税率のままで試算)
輸入品(食料品を含む全ての輸入品)や国内製品の価格が下がれば消費税の税収が下がる。今の時点では試算しにくいが3000億円程度は税収減になるのではないだろうか。
⑤日本からの輸出が思ったように増加しない場合、法人税の減税分を補い切れない場合が想定される。(計算には入れない。)・・・国内の需要の増加も余り期待できない状況下にある。
これだけで毎年約3兆円程度がマイナスになる計算になる。
Ⅱ.プラス要因
①輸出増加に伴う法人税の増加
しかし法人税減税が決まっており、多少輸出が増えた程度では法人税の税収はトータルで増加しない。
ちなみに現在の世界経済の状況から輸出が大幅に増える可能性は低い。
世界経済全体のパイが増加するどころかマイナスになる要因の方が多い状況では、輸出も思ったようには増えず価格競争に巻き込まれる可能性の方が高い。(輸出金額の減少ということさえも考えられる。)
政府の試算で出てきている年数千億円程度のGDPの伸びでは法人税の減収分さえ補いきれない可能性が高い。
②雇用の増加と給料のアップに伴う所得税収入の増加
上記で述べたように大幅に輸出が増加する可能性は低く、雇用の増加は余り期待できない。増加するとしても派遣などの非正規労働者であろう。正社員の給料アップも期待出来そうにない。
このようにTPPを日本の財政面から見た場合、マイナス要因の方が多い。(というかプラス要因は殆どない。)
政府はTPP推進に伴う国の財政面での負担増加についても、その予算措置等も含めて説明する義務がある。
自由貿易と関税を語る場合、忘れてはいけないことがある。
中国、インド、インドネシア、タイなど人口が多く経済発展が著しい国の国内需要を目的に海外進出する場合、相手国の関税が高いほど現地生産のメリットが大きくなることを忘れてはいけない。
相手国の国内で生産することで高い関税の壁を無くすことが可能になる。(いち早く進出すれば先行者利益を享受できる。インドにおけるスズキやインドネシアにおけるトヨタなどが例として上げられる。)
一概に関税をなくすことが輸出企業にとってメリットばかりとは言い切れないことも理解する必要がある。
政治・経済のニュースに対する感想を徒然なるままブログに書いています。
2011年11月16日水曜日
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