2010年6月23日水曜日

国の財政を考える(1)

どうも日本人は政局好きのようである。
しかし、一番重要なのは、政党の理念や政策、議員本人の政治理念である。
菅政権のキャッチコピーはわかりやすいようでわかりにくい。
特に「強い福祉」については、意味不明でイメージさえもわかない。仙石官房長官もよく使っているようだが、内容についてはあまり聞いたことがない。「安心できる福祉」ぐらいならわかるのだが・・・。

財政再建が党首討論等で大きな議題になっている。
消費税についてが中心だが、他の税も含めたわかりやすい議論をして欲しい。
議論では企業会計における損益計算書に該当する部分での論議が中心である。
しかし財政論議をする場合、企業会計における「貸借対照表」(財産目録)の部分もあわせて行わなければ、本当の意味での財政再建論議は行えないはずだ。

今まで国が国民に提示してきたデータは主に単年度の予算の内容(歳入と歳出の内訳)と長期債務(主に国債残高)である。
しかし、これらの詳しい内容について知っている人はほんの僅かである。

特に国債については、保有先をよく知る必要がある。
あくまで私は素人なので数字も正確ではないし、推測が多いのだが、概ね下記のようではないだろうかと推測する。
国債の国内消化率90~95%
日銀 10%前後
郵貯・簡保 30%前後
金融機関・保険会社等の機関投資家 20~30%前後
国との関係深い機関と所謂機関投資家と呼ばれる機関の保有ウェートが高く個人での保有率はそんなに高くない。
国債の利息はこれらのところに多く流れているのである。
余談ではあるが、日銀の役割は過ってないほど高くなっている。為替・国債のオペレーションをはじめ雇用政策にさえ大きな影響を与え始めている。

少なくてもこの資料だけで、現在の長期債務が喫緊に問題になるとは考えにくいことがわかる。
単年度の歳出で見ると「公債費(国債の償還や利払い)」が歳出の20~25%を占める。(そのうちの約半分が利払い)
現状ではこのための国債発行のウェートがかなりの部分を占めている。
実は小泉構造改革政権時代に「公債費比率」は大きく増加している。
国の歳出・歳入のデータは家計での「家計簿」を意識すればよくわかると思う。
しかし家計簿だけでは、家計の全体の内容は分からない。
預金や手許現金有高、住宅ローン残高、貸付金、株などの有価証券、車、土地・建物等の不動産等の内訳がわかって初めて家計全体が見えてくる。
たとえば、毎月の収支が赤字でも多額の預金があり、株を保有し、親から相続した土地や家があれば、あまり心配する必要なない。
逆に、収支が黒字でも、小さな子どもが多く、住宅ローンがあり、預金がなければ将来が心配である。

これと同じように、国も保有する財産を国民にわかりやすく提示する必要がある。長期債務や単年度の収支だけを取り上げ、財政危機を煽るのはフェアではない。

日本は世界最大の債権保有国である。(他の国の国債の保有や融資)200~300兆円とも言われる。
特会といわれるところにも100~200兆円あるといわれている。
為替変動準備金と呼ばれる特会には別に100~200兆円あるといわれている。
一説によるとこれらで約600兆円ほどあるらしい。所謂、国の資産(財産)である。
差引きした純債務は250~300兆円ほどではないかと考えられる。
この数字は、巷言われる程、ひどい数字ではない。
年金などの積立金は別途に管理されている。
このように、全体像を見ないことには財政状況を正確に判断することはできない。
※あくまで推測の数字なので参考にしないで下さい。

単年度収支で見る限りは、税収(特に法人税・所得税)の落ち込みが大きいことが一番の問題である。現状これらの税収を低所得者や中小企業などに負担がかからないよう、いかに増やすかが一番の課題と考える。
法人税を下げる環境ではなく、むしろ大企業の繰延損失の対象期間の短縮や租税特別措置の廃止、新たな成長分野での減税措置、外国企業誘致のための免税特区というような政策が有効と考えられる。

所得税においても最高税率を40%から50~55%にアップする。(それに伴い所得層ごとの累進課税の税率も変更)
株式の譲渡等の分離課税を総合課税に切り替えるなどが当面の政策として考えられる。
これらだけでも、かなりの税収アップにつながるはずである。
他の国と比較しても大企業やお金持ち優遇の税制になっていることは、いがめない。

消費税については、ヨーロッパの過去の事例でもわかるように大幅なアップは中小企業の淘汰につながり、特に日本のような中小零細企業のウェートが高い国においては壊滅的な影響を受ける可能性が高いと言わざるを得ない。
現状、内税表示にしているため、消費税の値上げ分をすべて価格に転嫁することは非常に困難で、中小・零細企業の経営を大きく圧迫する可能性が大である。
GDPの60%を占める内需の消費不足デフレの原因であり、消費税アップはさらなる消費不足を招く恐れさえある。さらなるデフレの進行である。
消費不足の解消または供給側での過剰生産の調整が進まないことにはデフレは解消しない。
可処分所得が増えないことには消費不足も解消しない。子ども手当のような直接支給の政策は、その点からは非常に有効な政策である。
値上げには反対の立場だが、もし実施するとしたら、表示を外税方式に変更すべきである。

はじめに戻るが、国の財政を企業会計の視点から見るとかなり違った見方ができる。
例えば国債であるが、これは企業会計で言えば資本金に当たる。買った方は証券という形で資産に計上するわけで国債の利払いは企業会計でいえば配当金に当たる。当然、利払いを受けた方は、配当金収入となるわけである。

国債の購入は「国に金を貸している」のではなく、国という会社に出資しているという見方である。
当然、株券と同じ扱いであるから市場でも売買される。
国債の購入者は日本という会社の株主という見方ができる。

現実的には、そぐわない部分も多く、一般的には異端的な見方とされるが、国の財政を考える時の参考としては非常に面白い視点であると思う。

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