税制や社会保障制度に思想は必要ないと考える人も多いと思うが、私は寧ろ税制や社会保障制度にこそ思想が必要だと考えている。
今、世界中で問題になっているのが「格差の拡大」であり、「貧困層の増大」である。
このことの根本的な原因がどこにあり、解決するために何をすべきかを真剣に考える時期に来ている。
「格差の拡大」や「貧困層の増大」は社会不安を生み出す原因になり、政治の不安定化を招く要因にもなりうる。そしてこれらは社会保障費の支出の増加にも繋がる。(生活保護世帯の増加などによる財政支出の増加)
先進諸国に共通する課題として中間所得層の減少と低所得層の増加があげられる。また金融資産などの高齢者層への集中という現象も共通課題としてあげられる。一部の人間と一部の年代層に所得と富が偏る傾向は、最早、世界的な傾向ともいえる。
自由主義経済、資本主義経済が含有する課題が顕著に表れ始めているように思えてならない。
税制や社会保障制度は国を運営するための根幹的なシステムであり、その根本には「どのような国を目指すのか」という思想が欠かせないと私は考える。
現状で、もっとも重要な観点と考えられることの一つが「所得の再分配機能」をどう構築し直すかではないかと考える。
「強いものはより強く」という弱肉強食の世界から「お互いに支えあう」という共存共栄の世界を目指して少しずつ舵をきり直す時期に来ているように感じられてならない。
「強者優先、優遇」の制度から「弱者にもやさしい」制度への転換が求められているように思えてならない。
政治家や既得権益層に属する人たちは、口では「弱者に配慮」などと臆面も無く発言するが実際の制度は、これらの人たちに有利に作られているのが現実だ。
一部の富を独占する人たちに有利なように制度が変えられてきたことが、現在の世界の混乱を招いた大きな要因であることを認識した上で考え直す時期に来ているのではないだろうか。
このような観点から「社会保障と税の一体改革」を考えた場合、消費税に偏りすぎた増税は寧ろ格差を助長する可能性が高い。よく消費税の逆進性が取り上げられるが、消費税は可処分所得が少ない中間所得層の低い方に属する人たち以下の所得層にとっては非常に負担率が高い税金であり、逆に所得の高い層の人たちにとっては負担率の低い税金である。(消費税は所得再配分機能を持たない税金である。)このことからも消費税を上げる前に所得税や資産課税などを「所得の再分配機能」が機能する形に作り変える必要がある。もちろん法人税も単に税率だけを議論するのではなく社会保障費の負担割合もあわせた形で議論すべきである。消費税の増税はその後の話であろう。
もちろん、無駄の削減が優先して行われなければならないことは言うまでもない。
偏差値だけは高い官僚は「自分達に都合のいい制度」しか考えない。「自分達に都合の悪い制度」は、絶対に認めたくないという人種であることをよく理解した上で法案を見た方がいい。
そもそも予算編成で「国債の発行額」をいの一番に決め、そこから予算編成を始めるという今の在り方自体に大きな矛盾がある。(一般の企業の経営計画で年間の借入金額をいの一番に決めるということは、ありえない。)
今のやり方を続けるというのであれば国債の発行額を20兆円に押さえ、財務省に予算編成をやらせればいい。一生懸命、特別会計から余剰金を引っ張りだしてくるに違いない。なぜなら自分達の給料を減らしたくないからだ。
今の政権の運営を見ているとすべからず、物事を進める順序が逆だ。
増税論議にしても「税収が景気に影響されにくい消費税が安定財源としてベターである。」「財政再建には消費税増税が必要である。」という最もらしい理屈がまかり通っているが、本当にそうなのか疑ってみる必要がある。
では何故、日本より消費税率(付加価値税率)が高いEU諸国が財政危機に追い込まれているのか。何故、財政再建ができないのか。この点についても検証が必要だ。
少子高齢化時代、人口減少時代、デフレ経済下において、本当に消費税中心の税制が将来的にもベターなのか。
最初にも述べたように、これからの社会では「所得の再分配機能」が機能する税制でないと社会保障制度自体の維持がむずかしくなる。「所得の再分配機能」が機能しないと社会保障を支える層の負担率が高くなる一方で、支える側が耐えられなくなる。支える側の数と所得を増やさないことにはいくらカッコイイことを言っても「絵に描いた餅」でしかない。
残念ながら消費税には所得の再分配機能がない。
これらの点や直下比率の問題、生前贈与による世代間でのスムーズな資産移転、景気変動に柔軟に対応できる税制であることなども含め、しっかりした思想を基にした税制の再設計が必要であり、それこそが本来の「社会保障と税の一体改革」でなければならないはずだ。
ただ単に「消費税を増税すれば改革できる」と言うような単純な、且つ「国債が暴落するから消費税を増税すべきだ。」という思想なき増税や改革では、問題の先送りに過ぎない。
そして一般予算だけでなく特別会計も含めた中での議論でなければ本当の議論とは言えない。
なにより国民にありのままの数字を公表することが最初に行われるべきことであるはずだ。
現状の数字を知らされないまま、また知らせようとしないままに一方的に増税を推し進めようとする野田政権の支持率が下がるのは当たり前の話で、支持率が30%を切るのも時間の問題だろう。
最後に一つ付け加えるならば、現在の政権や官僚組織は自分達で自分達に勝手にタガを掛け、その自分達の掛けたタガに自らが縛られ、そのことにより身動きが出来なくなってしまっているということだ。つまり一人相撲で勝手に追い詰められ勝手に躓いてコケようとしている。
思考回路が完全にショートしている。
彼らに任せていては何も進展しないということだ。(震災復興や原発問題を見ればよくわかる。)
偏差値だけが高い木偶の坊集団である。
政治・経済のニュースに対する感想を徒然なるままブログに書いています。
2012年1月9日月曜日
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