基本的に私の考えはTPPに賛成でも反対でも慎重でもない。
「必要ない。」というのが私の考えだ。
反論のある方は多いと思うが基本的に、関税や通商障壁はその国が自ら決めるものであり他の国に言われて開放するべきものでは無いと考える。
自らの意思で決めることであり、それが「関税の自主権」という概念だと思う。
「アメリカの評価」を気にして進めるものではないし、「自国を関税で守る」ということが悪いことだとは思わない。
これらの条約は基本的には2国間で結ぶべきものだと考えている。
TPPの最大の問題は「例外なき関税の撤廃」という「関税の自主権」という国が持つ自由な権利を放棄するに等しい条約であることである。
『それぞれの国がもつ自由な権利の下、「国益」に沿った通商条約を結ぶ』という当たり前のことを歪めることが世界の秩序を乱すことに繋がっているということを理解すべきだ。
それは「関税」のみならず「為替」や「金融」などにおいても同様で「それぞれの国情を考えず無理に共通化しようとする」という行為が大きな混乱を生むことは現在のユーロ圏を見ればよくわかるはずである。(国情の中には国民性も含まれる。)
その最大の問題は、混乱が「一国」だけに止まらず、他の国にも大きな影響を与え世界経済にまで影響を与えることにある。そしてこれを解決するためには膨大な労力と資金が必要になることである。
また多国間条約においては、「メリットが大きかった国」と「メリットが無かった国」、「デメリットが大きかった国」が必ず現れる。
むしろ不公平を助長させる可能性さえ考えられる。
さて、面白い記事があったので引用する。
今月、東京郊外で開催された家電国際見本市で話題をさらったのは、最新鋭のデジタルカメラや薄型テレビではなく、ユーロの急落がこの国の製造業に与えるダメージの大きさだった。
バナソニックの大坪文雄社長は会場で「対欧州売上高は今年、どの分野も下がっており、状況は極めて深刻」と語った。
この半年間にユーロは対円で18%も下落し、ユーロ高のピークだった2008年の1ユーロ=169円から37%も下げ、106円台を割っている。
円高との戦いでは実績がある日本企業だが、これまではドルが相手だった。ソニーの場合、1ユーロ当たり1円の円高が進むごとに、60億円の営業利益が吹っ飛ぶ。
対ドルではこうした問題は生じないという。ソニー関係者によると、為替ヘッジと、慎重に練り上げた調達戦略により円高・ドル安は「実質的に何の悪影響も及ぼさない」。
製造業がドルよりユーロの変動に弱い第一の理由は対応期間の問題だ。ドル安は1985年から一貫して進んできたため、日本企業には対策を講じる十分な時間があった。米国に多数の工場を設立し、賃金も部品代もドルで支払ってきた。
対照的にユーロは、08年の信用危機に至る時期まで対円で徐々に上げていたため、このところの急落は日本企業に不意打ちを食らわせた。日本の大半の製造業は11年度のユーロ相場を110~116円と見込んでおり、現在の水準が続けば業績予想の下方修正を迫られる社も出てくる。
もう一つの理由は、ユーロ建て取引が限定的な点だ。「原材料の調達は米国以外でもたいていドルで決済されるため、日本企業は為替変動の影響を免れる」ことができたが、ユーロの場合、圏外ではこうした機会がほとんどない。
トヨタの担当者は「一部納入業者とユーロ建て決済に向けた交渉をしているが(欧州の信用危機で)難しい」と言う。業界関係者は、東日本大震災の影響から完全には脱却していない日本の製造業に対し、欧州企業がユーロ安で競争力を強めることも懸念している。
(26日付)
=英フィナンシャル・タイムズ特約
日経新聞10月27日朝刊P.6
一昨日もブログに書いたが、日本の大手輸出企業は 円高・ドル安に対しては、かなりの対応力と持ちこたえる力をつけてきている。
経済団体や御用学者、マスコミが言うほど日本の企業は弱くない。
例えば、この記事にあるように、この半年間にユーロは対円で18%も下落し、ユーロ高のピークだった2008年の1ユーロ=169円から37%も下げ、106円台を割っている。
同じように米ドルは2007年には1ドル=120円台であったものが現在はユーロと同様40%近くも下げ、75円台にまで下がっている。
韓国ウォンに対しても同様である。
これからもわかるように、今回の局面ではユーロ圏での販売低下が大きな問題となっている。
そして、その問題の最たる要因は為替相場である。関税ではない。
実はこの問題は、もう一面からも見る必要がある。
韓国や中国もヨーロッパへかなり輸出している。特に韓国はウォン安を武器に、ここ数年、急激に輸出を伸ばしている。
実は、韓国や中国からの工業輸出製品にはかなりの部分で日本の部品が使われている。
ヨーロッパの景気後退は韓国や中国の輸出にも大きな影響を及ぼし、それが引いては日本の輸出の減少にも繋っているという事実である。
逆に言えば、中国や韓国の工業製品の輸出増加は日本の輸出増加に繋がっているということである。もちろん、それに伴い日本の工作機械の輸出も伸びている。
このことの意味するところは、アメリカの製造業は空洞化し製造工場は中国や東南アジア、ブラジルなどの新興国に移動している。
そしてそれらの工場で作られる製品の中には日本の部品が多く使われている。
関税撤廃におけるアメリカからの工業製品輸出におけるメリットが、ほとんど無いことはこのことからも証明できる。
このように、貿易というものを2面性を持ってみてみれば、TPP推進議員や経済団体、御用学者、マスコミなどが言っていることが、いかに自分達に都合のいいように歪曲された発言であるかがわかる。
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