最近、ヨーロッパの財政危機に関するニュースが激減している。
これといった政治的進展があったわけではない。
しかし、共通通貨ユーロに対する安心感が出てきたことは間違いの無い事実であろう。
これは、一重に株高が原因だ。
ユーロ圏における財政破綻、即ち国債の暴落による金融機関の破綻の危機が株高で薄らいだことが最大の理由だ。
つまり、株高で株を大量に保有する金融機関の資産が膨らみ、それに伴い自己資本比率が上昇したからだ。ギリシャなどの国債が暴落すれば、国債を大量に保有する金融機関の資産が減少し、それに伴い自己資本も大幅に減少する。
国債が暴落しても、それによる資産の目減り分を株高による資産の増加分で穴埋めができる可能性が高まったことで、ヨーロッパ中央銀行などによる金融機関への資本注入額が少なくてすむ可能性が高まったことが大きい。
そして、これらの要因になっている一つがアメリカ経済の持ち直しにある。景気が現状より落ち込む可能性が一段と低くなったとの観測が広がったことの影響は大きい。
そして、アメリカ経済の持ち直しの要因になっているのが自動車メーカーに代表される製造業の復活であり、海外進出企業のユーターン現象であり、国内における自国産製品を使おうという消費者意識の変化などにある。
つまり、消費者の中に芽生えた「保護主義的な意識」が国内製造メーカーの復活を後押しし、海外進出企業の工場の国内回帰を促進させている。
GDPに占める個人消費の比率が高いアメリカにおいて、個人消費の持ち直しと製造業の復活傾向は雇用にも大きな影響を与える。
そして、これらはヨーロッパ経済にも、いい影響を与える。
もう一つが、FRBや日銀の「インフレターゲット政策」にある。アメリカがデフレ突入回避を日本がデフレ脱却への意思を明確に示したことの影響は大きい。
これらが世界経済、とりわけ金融機関の安心感と期待につながったことが、その後の株高や円安傾向などをみればよくわかる。
そしてEUも今までの「超緊縮財政推進」の立場から「経済政策優先」へと少しづくスタンスを変化させつつある。
そして、これらの動きの中で注目すべきは、いかにして自国の雇用を増やすかという点に政治の力点がおかれ始めたことにある。
自国の雇用を増やす=自国の個人消費の増加=税収の増加=財政再建
つまり輸出一辺倒の政策からの転換が計られようとしている。これは新興国においても同様な傾向が見られる。
このことは、今までの「自由貿易推進政策」や「経済連携推進政策」の見直しにも繋がっていく。
「行き過ぎたグローバル経済の弊害」と「自国民の利益優先」を、各国が真剣に考え始めたことを意味する。
いくらグローバル企業が海外に進出し売り上げを伸ばしても、それが一部の人間の利益だけに留まり、他の多くの自国民の利益に繋がらないことを理解し始めたことを意味する。
これらの意識の変化はTPPやFTAなどの経済連携協定にも、大きな影響を与える可能性がある。
「国内の製造業が復活の兆しを見せ雇用状況が改善され始めているのに、無理に協定を結んで、わざわざ今以上に安い製品を輸入し、競争を激化させる必要があるのか」という意見が出てきても不思議ではない。
つまり、国外に向けたれていた眼が、国内に向け始められたということを意味する。これは選挙などとも微妙に関係する。
これらはEU諸国においても同様で先進国諸国においては、「国内経済の立て直しと雇用の創出」に政策の重点が移っていくものと考えられる。
ただ、これらは口で言うほど簡単ではなく、世界的な経済危機、金融危機が過ぎ去ったわけではない。
寧ろ、現状のユーロなどの枠組みの弱点が露になったことで、更なる変革と変化が求められようとしているのかもしれない。
もう一点が政治の不安定化で、政治の安定をどう築き上げていくのかも大きな課題になるだろう。
政治・経済のニュースに対する感想を徒然なるままブログに書いています。
カレンダー
つぶやき
月別アーカイブ
-
▼
2012
(276)
-
▼
3月
(32)
- 国民新党内のクーデター・・・下地・自見氏の間違い
- 「次の世代の負担を減らすため・・消費税増税にご理解を!」by野田佳彦・・・嘘を言っちゃ~お終いよ!
- 消費税増税は商店街を潰す・・・地方の都市を見れば、よくわかる
- 消費税は間接税である・・・小沢さんの消費税に対する認識は他の議員と違う
- 自民党は消費税増税法案に賛成できるのか?・・・できない!
- 国民の生活が壊される大増税!・・・ガソリン値上げ、電気料金値上げ・・・追い討ちをかける200%の大増税
- 消費税増税の嘘を暴く・・・消費税増税分は税収減の穴埋めでしかない。
- 消費税政局のこれから・・・財務省の冒した間違い
- 消費税の持つ危険性(2)・・・金融・経済政策面から見ても間違っている。
- 消費税の持つ危険性(1)・・・「強者の消費税議論」と「弱者の消費税議論」
- 消費税増税はGDPを下げる。・・・身近な経験から思ったこと
- 小沢裁判が結審・・・判決と今後の政局について
- 野田首相は菅政権の失敗から何も学ばなかったのか・・・この道は、いつか来た道・・・。
- 消費税増税法案:結論先送り、執行部は修正案整理へ・・・積極的賛成派の議員はどれだけいるの?
- 原発事故検証:「菅」か「官」か?・・・責任の擦り付け合い始まる。
- 原発問題を考える(2)・・・原発の再稼動は可能か?
- 野田首相は温家宝首相を見習え・・・無理だろうな~。
- 小沢さんが勉強会で民主党議員に伝えたかったこと
- 小沢裁判:海外ドラマを参考に考察してみた・・・検察側の証拠は全て証拠能力を失う。
- 東日本大震災と原発事故を考える(2)・・・「絆」という言葉の意味を考え直してみよう。
- 小沢裁判の論告求刑について(2)・・・指定弁護士は勝手に「小沢主犯」にするな!
- ユーロ危機が一息ついている理由・・・株高が最大の理由
- 小沢裁判の論告求刑について・・・指定弁護士を告訴すべし
- 東北大震災の復興と原発事故対応で感じること・・・行政システムの劣化
- 外堀を埋められた野田首相・・・選択肢が絞られてきた。
- 増税の為のアリバイ作りに忙しい岡田副総理・・・国民は見透かしていますよ岡田さん
- 野田政権&財務省の嘘がばれ始める・・・こんなはずではby財務省幹部
- 野田・谷垣極秘会談(その2)・・・公明党と輿石幹事長は怒っている。
- 官僚の政治介入を許していいのか!・・・野田・谷垣極秘会談”財務省幹部らが仲介”
- 谷垣さん、あなたは何がしたいの?・・・菅、野田、谷垣氏に共通する背景
- 民主・自民の増税賛成派の議員は小選挙区で80%の確率で負ける。・・・統計学的に計算してみた。
- 極秘会談:野田首相と谷垣自民総裁 消費増税で協力模索か・・・話し合い解散はできるのか?
-
▼
3月
(32)
ニュース
ウェザーニュース
ヘッダー画像「ブログ ヘッダー画像 無料」様の画像をご利用させていただきました。
Template Design: © 2007 Envy Inc.
0 件のコメント:
コメントを投稿